訪問着とは?他の着物との違いや着用時のポイントなどを徹底解説
着物にはさまざまな種類が存在しますが、中でも多くのシーンにマッチするのが「訪問着」です。
訪問着はフォーマルな場からカジュアルな場まで幅広く着用することができるため、一着持っておくと着回しがききます。
また色柄に流行が無いため10年、20年と長年着用できる点もメリットでしょう。
今回の記事では、訪問着の基本に触れた後、訪問着と他の着物の違い、訪問着に合わせると良い帯などについて解説します。
これから訪問着にチャレンジしてみたいとお考えの方は、ぜひ参考になさってください。
訪問着とは?
「訪問着」とは、さまざまなシーンで着用できる汎用性の高い着物のことを指します。
例えば観劇やお茶会、お呼ばれの席、またお子様がいらっしゃる方であれば入学式や卒業式にも着ることができる幅広い用途がある着物です。
そのため、和風のものはもちろん、モダンな洋風デザインの着物まであり、着用のシチュエーションに合わせて選ぶことができます。
さらに、既婚や未婚などに関わらず着ることができるため、おしゃれの一種としても気軽に楽しむことができるでしょう。
訪問着の歴史
「訪問着」という種類の着物は和装の中では新しい部類に入ります。
誕生したのは大正時代初期、1910~1920年頃のことなので、歴史的には100年ほどと浅め。
もともと日本には留袖などのフォーマル着物か、小紋などの日常着の二つしかありませんでした。
わかりやすく表現すると、洋服で言うところの「ドレスかTシャツしかなかった」というわけです。
しかし大正時代に入った頃、日常着として洋装を選ぶ人が増え、その一方で着物の「外行き着」としての需要が高まります。
留袖ほどかしこまらず、でもお出かけ着になる着物が欲しいという声が増えたため、大手呉服店が訪問着を打ち出したのです。
その名の通り、「人の家を訪問する際に失礼にならない着物」という存在として、訪問着が徐々に広まっていきました。
訪問着の特徴
訪問着の一番の特徴は「流れるような絵羽模様」でしょう。
その中でも色や柄がバラエティに富んでいるのが訪問着の良い点です。
古典的な柄の訪問着もあれば、パーティー用の個性的な柄の訪問着もあります。
昨今では紬の訪問着なども人気です。
さまざまなシーンで着用できるからこそ、「場面によって訪問着に変化を持たせたほうが良いの……?」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、素材が正絹で古典的な柄行のものを選べばどんなシーンで着用しても失礼にあたらないため、そういった訪問着一着を着まわすのもおすすめです。
紋なし・紋ありの訪問着の違いは?
訪問着には「紋の入ったもの」と「紋の入っていないもの」があり、その違いは「格の高さ」にあります。
ご存知の方も多いかもしれませんが、「紋入りの訪問着」は「紋無しの訪問着」よりも格が高いです。
紋入りの訪問着を着用する場面としては、茶事のような正式なお茶会や初釜などの晴れやかなシーンが挙げられるでしょう。
正装が求められるセレモニーやフォーマルな席への着用がふさわしい着物です。
そのシーンの一つに結婚式も挙げられますが、結婚式の際に訪問着の着用を検討されている場合は注意が必要になります。
というのも、新郎新婦のお母様であれば結婚式や披露宴の列席には第一礼装である「黒留袖」が基本となるため、紋入りであったとしても訪問着は着用できないのです。
友人や仕事関連での参列であれば、訪問着での参列でも問題ありません。
一方、紋無しの訪問着は、紋ありの訪問着よりも幅広く着用することができます。
パーティーやお子様の入学式、卒業式などへは、紋入り・紋無し、いずれの訪問着も着用することが可能です。
フォーマルな場だけでなく、幅広いシーンで着用したいという場合は、紋無しの訪問着を選ぶと良いでしょう。
訪問着と色留袖の違いは?
訪問着と色留袖は、一見するとどちらも同じ柄行きで、「どこがどう違うのかわからない」という方も中にはいらっしゃるかもしれません。
しかしよく見ると、肩部分に大きな違いがあるのです。
訪問着は肩から袖に流れるように柄があしらわれているのに対し、色留袖は肩部分に柄が無く、裾部分にのみ柄が施されています。
判断の基準としては、
・訪問着:上半身・下半身ともに模様がある
・色留袖:下半身にのみ模様がある
といったように覚えておくと良いでしょう。
また訪問着と色留袖は着物の格も違います。
訪問着は基本的に「準礼装」「略礼装」といった着物として幅広いシーンで着用可能ですが、色留袖は「礼装」であるため、各種式典や親族の立場で列席する結婚式などでの着用が一般的です。
訪問着と付下げの違いは?
色留袖も訪問着とよく混同されがちですが、「付下げ」も色留袖同様、訪問着と見分けがつきにくい着物です。
付下げはもともと訪問着の煌びやかなイメージを控えるように作られた着物。
戦時中の「贅沢品はご法度」という流れから豪華な印象の訪問着の着用が禁止されてしまったため、その代わりとして付下げが作られたと言い伝えられています。
そのため、付下げの見た目は訪問着よりも落ち着いた印象で、訪問着の特徴である「流れるような絵羽模様」はありません。
訪問着と付下げを見分ける時は、「絵羽模様があるか」といった点に注目してみましょう。
「豪華な印象を抑えるために付下げが作られた」という話からお察しの方もいらっしゃるかもしれませんが、着物の格は付下げよりも訪問着の方が高いです。
結婚式や大規模なパーティーなどの華やかな場に行く際はより豪華な訪問着、小さなパーティーや同窓会などに行く際は付下げが向いているでしょう。
訪問着にはどんな帯を合わせると良い?
これまでご紹介してきたように、着物にはそれぞれ格があります。
それと同様、合わせる帯にも格の違いがあり、帯の格は着物の格と揃えるのが一般的なルールです。
訪問着の格は「準礼装」「略礼装」なので、合わせる帯は「フォーマルな帯」が基本。
具体的には「袋帯(二重太鼓)=フォーマル」「名古屋太鼓(一重太鼓)=カジュアル」となるため、「綴れ帯」など一部の帯をのぞき、訪問着には袋帯を合わせましょう。
それではなぜ、一重帯である綴れ帯は訪問着に合わせても良いのでしょうか。
「綴れ」とは数ある織り技法の一つで、「日に一寸(一日で3.8cmほどしか織り進められない)」と言われるほど職人の緻密な作業が必要になる技法であり、かなりの時間をかけて織り上げられます。
また現在織り上げられている袋帯よりも古い歴史があり、織り地がしっかりと密で地厚な仕上がりとなるため、一重太鼓でありながらフォーマルな着物にも合わせられるのです。
昨今ではおしゃれ帯としての綴れ帯も織り上げられているため、訪問着を着ていくシーンに合わせて選択してみるのも良いでしょう。
訪問着を着る時のポイント
訪問着を着る際には、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
まずは、「紋の有無」。
先述したように、訪問着には紋の入ったものと紋の無いものがあります。
セレモニー色の強いシーンでは、ぜひ紋入りの訪問着を着用してください。逆にカジュアルなパーティーなどでは紋無しの訪問着のほうがふさわしい場合があります。
現代では紋無しの訪問着のほうがより幅広いシーンで着用できることも踏まえ、ご自身のライフスタイルに合わせて選択してみてください。
また合わせる小物も気にかけておきたいポイントです。
着物の印象は合わせる小物によっても大きく変わりますし、その場にふさわしい小物というものがあります。
例えば、慶事である結婚式や披露宴には、金糸や銀糸が入った格の高いものを選びましょう。
草履もツヤのある台に、金糸や銀糸が使われた鼻緒のものをチョイスするのがおすすめです。
逆にカジュアルなシーンでは素材などにこだわり過ぎず、ご自身ならではのコーディネートを楽しむために、好きな色やモチーフを取り入れてみましょう。
最後に気にしておきたいのは、やはり「他の着物との違い」です。
今回の記事でもご紹介したように、一見、訪問着との違いがわかりにくい着物もあります。
色留袖と付下げは特に訪問着と混同されがちですが、格が高い順に色留袖、訪問着、付下げです。
紋の数や合わせる帯によっても格が上下するため、迷う場合は着物専門店などに問い合わせてみると良いでしょう。
まとめ
今回は「訪問着」の基本や、他の着物との違い、訪問着を着る時のポイントなどをご紹介しました。
訪問着はフォーマルな場面でもカジュアルな場面でも着ることのできる、汎用性の高い着物です。
紋入りの訪問着であれば正装が求められるセレモニーなどに向いていますし、紋無しの訪問着であればカジュアルなパーティーや、それこそご友人のお宅を訪問する時などにもぴったりです。
色留袖や付下げとの違いには気をつけなければいけませんが、「着物デビューをしてみたい」という方は、訪問着から始めてみると良いかもしれません。
しかし、着物を購入するとなるとやはり少しハードルが高く感じてしまう方もいらっしゃるでしょう。
「e-きものレンタル」では、結婚式やお食事会、入学式、お出かけ着としての訪問着を数多く取り揃えています。
「着物は着てみたいけど、それほど頻繁に着るわけではない」などといった場合は、レンタルで着物を楽しんでみてはいかがでしょうか。
一万円以下のものから二万円台のものまで、素材や色、柄のバリエーションが豊富なため、目的に合った訪問着が見つかるはずです。
「こういった場面ではどういう訪問着がふさわしいのか」といった疑問をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
シーンにふさわしい訪問着選びからサポートさせていただきます。
「着物に挑戦してみたい」「たまには手持ち以外の訪問着を着てみたい」といった方は、レンタル着物で気軽にイメージチェンジをしてみましょう。